Cantante

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おもての優雅さ

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イベント企画というあまり気に入っていないお仕事をするようになって、気づいたことがある。

企画の内容を考えたり、講演の手配をしたり、そういうのはあまり好きになれないのだけれど、当日になって、受付をするのはとても楽しい。

明るい笑顔を作って、まろやかな声で対応すること。その日ばかりはきちんと自然な色のマニキュアを塗って、名刺を頂いたり、パンフレットをお渡ししたりすること。それは本当の私とはちっとも関係なくて、かけ離れていて、一過性の美しい瞬間を作るということのような気がする。
そのときだけ、違う人間になったような気持ち。

偽ることが楽しいんだろうか、と考えるとすこし物悲しい気持ちになったけれど、おそらく自分はそういうささやかな美しさみたいなものが好きなのだ。

学生時代も百貨店でお見送りのアルバイトをしていて、同じことを感じた。ただ百貨店を出ていくお客様に、ありがとうございました、とお辞儀をするお仕事。
夜だったから人通りもないし、お客さんだって気づいていないかもしれないけれど、きっちりと清潔に装って、お客さんの歩くスピードによってもお辞儀の長さを調整したりする。そういう隠れた優雅さみたいなものが、私は好きだったのだ。

そういうのは、自分のこころをすこしだけ豊かにしてくれるような気がする。

できればそういうのが、お仕事だけではなくて、自分自身のこころがけになればいいのになあと思うけれど、だらだらするのも大好きなのでなかなかむずかしい。
いつかはどんなときも髪を結いあげて、お着物を着て暮らすような、美しいおばあちゃんになれればいいな、なんて考えている。